近年の精密な宇宙観測により、我々の宇宙には、現在の素粒子物理学では説明が不可能な未知の物質が、通常の物質の5~6倍程度存在することが明らかになっています。そのような未知の物質は、光を発しないことから、暗黒物質(ダークマター)と呼ばれています。
現在では、ほぼ全ての研究者が我々の宇宙にダークマターは確実に存在すると考えていますが、これまでに観測で得られたダークマター存在の証拠は、重力相互作用によって得られた間接的な結果のみです。ダークマターは我々の身のまわりにも存在するはずなので、ダークマターを重力以外の他の相互作用により実験室で直接観測する(直接探索と呼びます)ことができるならば、その性質を解明する手がかりとなり、宇宙や素粒子物理学に関する我々の理解がより深まることにつながるはずです。1990年代頃から世界中で活発な暗黒物質の直接探索が行われて来ましたが、まだ直接探索による暗黒物質の確実な証拠は得られていません。
本研究室では、現在、XENON実験、NEWAGE実験の、2つの暗黒物質直接探索実験を推進しています。 XENON実験は2層式の大質量液体キセノンを用いた実験です。神戸大学は2017年よりXENONnT実験に参画しています。 本研究室では、まずはXENON実験の様な大質量検出器で暗黒物質の兆候を捕えることを目指しています。 NEWAGE実験は、方向に感度を持つ検出器を用いて、暗黒物質の到来方向を検出することを目指す、本研究室が主導する研究プロジェクトです。現在、 NEWAGE実験では装置開発と試験観測を進めています。
XENON実験で暗黒物質の兆候を捕えた際に、NEWAGE実験により暗黒物質の到来方向の決定を行う事も実現できれば、暗黒物質の発見がより確実なものになり、我々の宇宙や素粒子に関する理解が大きく進展することが見込まれます。